イスラム教と猫と犬と豚と食

日本人の私たちにとって猫と犬は同じ動物の範疇でかわいいペットですね。世の中には猫派と犬派とがあって、それぞれペットとしてどちらが自分の好みかという感覚だと思います。

一方、世界には多様な宗教があって、その宗教によって、受け入れられる動物または忌み嫌われる動物が決まっていたりします。

世界でもっとも信者の多い宗教はイスラム教ですが、イスラム教では猫は大事にする動物であって、犬は忌み嫌われる動物となっています。

イスラム教国で日本に近い国インドネシアの例を以ってこの課題を見てみましょう。

なぜ猫がイスラム教では受け入れられるのか

イスラム教では猫は敬愛される動物といわれています。預言者ムハンマドが猫が大好きで、猫をいじめたり殺すことを禁じたと言われています。

一般的に猫は清潔であるという印象をイスラム教の人たちは持っています。

猫は古代オリエントの時代からアラブの国で尊ばれてきました。また古代より、猫は穀物庫、食料庫を有害な動物から守るほか、本を食べるネズミをとる等人間にとって有用な動物の位置づけにありました。

インドネシアでも大事な米を食い荒らすネズミを捕食する猫は昔から大事にされていました。

一方、犬に対してはイスラム教の人たちは冷淡であり、忌み嫌うという傾向があります。なぜでしょうか。

なぜ犬がイスラム教では嫌われるのか

インドネシアでは、犬は邪悪な悪魔を連れてくるため忌み嫌われると現地の人たちに教わりました。実際に現地のインドネシア人はこのように信じています。

現地の人は、こっけいなほど犬を怖がり、子犬でさえ近寄ろうとしません。

イスラム教的には、昔のイスラムの地域は、豚肉にしろ、死肉にしろ食べたら危ないものや当時の衛生環境や気候と調理環境などにより病気になりやすかったであろうものは不浄なものとされていました。

犬については、昔から狂犬病という、今でも怖い病気をもっており、昔から最も致死率が高い病気として恐れられていました。

したがって、不潔な豚、不浄な犬はイスラム教では忌み嫌われる動物となったのです。

インドネシアでは、実際に家の中でペットを飼ったりしている金持ちの家庭はあります。また、インドネシアでの華人では、犬は番犬として一般的に飼われており、インドネシアで犬が全くいないわけではありません。

最近は、富裕層、中間層の増大により、イスラム教の人でもシェパード、ハスキー等地位の象徴として大型犬、中型犬を飼う人もいます。

ちなみに、犬の散歩は、メイドなり、運転手なりがしているのを街中でよく見かけます。家人が散歩をする姿はめったに見ません。

不浄という食べ物

潔な豚という話題が出たついでに、皆さんハラールという言葉をご存知だと思います。固い言葉で言えば、イスラム教の戒律に即している事柄や行為のことです。反対語はハラーム。ハラールは食、観光、医療、金融などさまざまな産業に関わってきます。ハラームは禁止行為であり、この中には豚肉、酒、それらの製造・販売。喫煙、窃盗、殺人などが入っています。

食のハラールという、ハラールという言葉は皆さんがよく耳にする言葉です。この中には細かい規律がありますが、これは別の機会に譲ります。

最後に

世界の中で、手で食事をする習慣のある地域は、アフリカ、中近東、アジア、など。世界の半分以上の地域では手で食事をする習慣があります。イスラム教では、左手は不浄の手として、食事の際には右手で米をつまみ、右手でおかずをまぶし、右手で口に運ぶという作業があります。慣れていない日本人にはなかなかに難しい精密作業となります。

例えば、食べ物を裂いて小さくしなければならない場合にも左手の使用は避けなくてはなりません。ではどうすればよいか。簡単です、両手でナイフまたはスプーンとフォークを使い、切って取り分ければよいのです。

文・写真 鰐部範久