インバウンド旅行ビジネスを考える ~交流と商売のあいだ~

『観光客(交流人口)が増えれば地元経済が潤う(だろう)』という発想は間違いです。来訪した観光客は、その地で写真だけ撮り、消費はせずに次の観光地に移動してしまうからです。儲かるのは電車や貸切りバスなどの交通機関だけです。こうならないために、地域観光業が潤うための留意点は、①事前予約②顧客満足③地域連携、の3つです。

①事前予約の仕組み

まずは、事前予約の仕組みが大切です。遠くに行く旅行者ほど、経済的な余裕のある方ほど、旅先での過ごし方に拘り、安心して旅する環境を求めます。事前予約が大切なのは、全ての旅の要素(交通機関、宿、食事、ツアー等)に亘りますが、ほとんどの魅力的な観光地がすぐに取り組むべきは、『魅力的なランチ』です。

魅力的な観光地Aに、海外からの観光客が事前に予約できて観光地Aにふさわしい魅力的な昼食が あればどうでしょうか?旅行者は訪日前に、魅力的な昼食を予約する事で、昼食場所を探す手間を貴重な旅行期間中の時間から省き、さらに観光地Aを食事の魅力と併せて満喫できます。そして観光地Aの昼食事業者は、事前予約によって仕入れや宣伝等の経営効率化が図れます。また、予約制の昼食による滞在時間の増加は、お土産や、ドリンク・スナック等々という、観光地Aでの旅行生活消費も促します。 更に観光インフラは、観光地を訪問する人への対応としてだけではなく、自国潜在顧客を観光地に誘導するツールとして活用する事が、観光地経営の効率を上げます。例えば、私たちが(南)フランスの田舎に行こうと思う時、地域色豊かな(ブイヤベース等の)ランチは楽しみの一つです。観光地を彩る魅力的なランチは観光地の魅力に相乗効果を加えます。また昼食を楽しむ仕組みは、訪問地決定の要素にもなります。更に、観光地の昼食インフラ(ランチの雰囲気や便利さの工夫)が顧客の事前期待を上回る事が できれば、口コミや旅行事業者の評判を高め、リピートに繋がります。

②顧客満足ファーストの姿勢

次に、観光地の事業者にとっては、顧客満足ファーストの姿勢が大切です。これは、サービス業のおもてなしの質の話ではなく、商品を考える際の基準の話です。  旅行商品や素材の選択について、事業者自身が自分の旅に用意できる範囲からの想定顧客予算(本人にとっての一般常識)を基に考える事は、ビジネスの成功を阻害します。例えば自分が飛行機のエコノミークラスにしか乗らないからと言って、ファーストクラス志向の顧客の旅が作れない営業パーソンは、プロとは言えません。観光事業を整える際は、客観的に顧客の状況と満足度を考える視点、顧客満足ファーストの姿勢が必要です。 経済大国日本においては、日本人トラベラー(旅行者)は、日本国籍を持つ人の水準から考えると、だいたい中流です。その結果、日本人の事業者も中流階級のお客様を想定して事業を行う傾向があるようです。しかし、日本に来ている外国人トラベラーは、彼の国では上の中位の収入がある、経済的余裕のある層が多いのです。つまり観光地の商品は、上の中位以上の上質なサービスが求められています。例えば、東京では5つ星や6つ星クラスのホテルが満室です。6つ星は、二人一泊一室(朝食、税・サービス料込)で 7~8 万円位の宿泊料金ですが、このお客様の層を、地方都市でどう受けるか?について考える必要があります。旅行インフラ(乗り物や食事)をどうするか、も重要です。お客様にとっての高付加価値を 検討して、効果的に商売できているか、のチェックをする必要があります。

③地域連携

そして発展のカギは、地域連携です。わざわざ海外から日本にやってくるお客様の関心度を考えれば、おらが村、おらが店のインバウンド対応だけでは足りません。東京や京都・大阪に集中しているお客様を、どうやって当県・当地域に引き寄せるのかを広域連携して考える必要があります。訪日観光客の平均旅行日数は7日間です。これは日本人の国内旅行平均日数より長く、また日本人の短期レジャーに多いA地点からB地点に旅をする I(アイ)型の旅でなく、 長期の旅程を前提としたABCDEFG 地点位の O(オー)型の旅です。お客様はどこから来てどこへ行くのか、当地域のインとアウトのポイントはどこか?どう動くか?だから何が欲しいか?広域の旅程を想定して商品を考え、広域連携して広告宣伝を想定する事が効果的です。

私の仕事~観光ビジネス業のご支援

インバウンド・ビジネスは地方経済活性化に果たす役割が期待されています。訪日観光客数が増え、日本各地の交流人口が増加し、経済発展に繋がる、というバラ色の未来方程式が話題となる場合もありますが、この方程式は簡単には成りません。地方の交流人口が増える事による地域活性化と、地域観光事業者の経営向上による経済発展との関連付けが、まだ弱いと考えられるからです。観光事業を経済発展に繋げるためには、 個々の事業者の経営体力向上や、持続可能なビジネスの組み立てが必要です。参入障壁が低いと言われる観光業界で、既存や新規の観光事業創始者が成功するためには、地域や事業者の観光戦略策定が重要な要素になると考えます。

以上、観光事業者様にご提案したいポイントを述べさせていただきました。観光事業者様のご発展の一助となる機会があれば幸いです。

ミシュランガイド

(参考ガイドブック)

執筆者

KUDOS MANAGEMENT工藤 桂(くどうかつら)